健康な歯をどうして抜くの?矯正治療の便宜抜歯とは
歯列矯正では、治療を進めるにあたって抜歯を行うことがあります。これを専門的には便宜抜歯(べんぎばっし)と呼んでいるのですが、患者さんからしたらなぜ、健康な歯を抜かなければならないのかと疑問に思うかもしれません。ここでは矯正治療で必要となる便宜抜歯について、抜かなければならない理由や抜歯に伴う痛みなどについて詳しく解説します。
歯列矯正を希望される患者さんは、骨の大きさと歯の並び方に何らかの問題を抱えています。よく耳にするのは、乱杭歯と呼ばれる叢生(そうせい)や出っ歯、八重歯といった歯列不正です。これらの多くは、顎の骨の大きさと歯の本数が釣り合わず、歯列からはみ出すことで生じています。
簡潔にいうと歯を並べるためのスペース不足です。生えてくる歯の数は予め決まっていますので、歯が標準よりも大きい場合やそれを並べるための顎の骨が小さかったら、どうしてもはみ出してしまうのです。
歯列矯正で便宜抜歯を行うと、抜いた歯の分だけスペースが生まれます。このスペースを利用することで、はみ出していた歯を正常な位置へと戻すことができます。もちろん抜歯を行うのは、基本的に健康な歯ですので、本来は抜く必要がありません。それだけに抵抗を感じる人も多いかと思いますが、乱れた歯並びというのは、それだけでむし歯や歯周病のリスクになり得ます。歯の本数が多いだけで使われていない歯は機能せず役にたちません。また、抜歯をすることで審美性も高まります。これらのメリットとデメリットを勘案した上で、矯正の先生は便宜抜歯を行った方がよいのか考えています。
便宜抜歯に伴う痛みは、非常に個人差があります。抜歯をする際には、基本的に麻酔をかけますので、それほど強い痛みは感じないことが多いです。ただ、麻酔が効きにくかったり、抜歯をしにくいような歯の生え方をしていたりする場合は、多少の痛みを伴うことがあります。
便宜抜歯にかかる時間は、ケースに応じて様々です。数秒で抜ける場合もあれば、十分以上かかる場合もあります。ただ、多くのケースで小臼歯という生えている歯を抜くことになりますので、それほど長い時間はかからないといえます。どのくらいの時間がかかるかは、予めレントゲン写真や口腔内の状態を見ることである程度予想することができます。
矯正治療を進めるにあたって、抜歯をせずに済むケースはもちろんあります。元々歯を並べるためのスペースが足りている場合は、便宜抜歯をする必要がありません。また、便宜抜歯が必要なケースであっても、患者さんが抜歯を強く拒まれる場合は、非抜歯で矯正治療の計画を立案することもあります。この点は、主治医の方に相談されてみてください。歯科矯正には様々な治療法がありますので、患者さんの希望に出来るだけ沿った計画を立案してくれることでしょう。