不思議なことには皆さん興味がありますよね。UFOや超能力、オーパーツなど未知なものには好奇心がわいてきます。
ただ手品同様にそのタネあかしにより落胆することも多いですよね。タネを知るまではあんなに不思議だったのに、なーんだなんて思うことも・・・。それなら知らない方がいいなんて事もありますが、スッキリしないと気が済まないから、人の心は複雑です。
矯正治療で歯が動く・・・、私ははじめのころ不思議でした。矯正装置を付けて、針金を通して一ヶ月後、歯が動いています。
よく矯正治療を始める前のカウンセリングでも、「抜歯した隙間は閉じるんですか?」と質問されることがあります。動かないと思っていたものが動くとなると不思議ですよね。どのような仕組みで歯が動くのか、今回はこのテーマでお話しします。
歯が動く・・・、その大きな役割を担っているのが『骨の代謝』です。もちろん、矯正治療をしていなくても、骨の代謝は起こっています。新陳代謝は体全体で起こっています。
では、何が違うと歯が動くのでしょうか?例えば歯を右側に動かしたいとき、矯正装置により右に力を加えます。すると、歯を支えている骨の右側の部分の骨が 吸収され、左側の骨の部分に骨が作られます。これにより、新陳代謝に差がうまれ、歯の入っている穴が右にずれ、歯が右側に動くのです。
矯正治療をしていない場合は、歯を動かす力が働いていないため、歯を支えている骨の全周にわたり均等に古い骨が吸収され、新しい骨が作られます。そのため歯の入っている穴の位置はずれることはありません。結果として、歯は動かないのです。
そして歯が動くためには、もうひとつどうしても欠かせないものがあります。
それは歯の根とその周囲の骨の間にある『歯根膜(しこんまく)』と呼ばれるクッション材の繊維です。この繊維によりどの方向に力がかかっているかを感知でき、骨を吸収したり作ったりする信号が送られます。
そのため、この歯根膜が何らかの原因、例えば転んで歯をぶつけたり、障害を受けたりすることにより歯根膜が破壊されると、修復の過程で歯と骨が直接的にくっついてしまい、歯が動かない状態になることがあります。これを「アンキローシス(骨性癒着)」と呼びます。
このアンキローシスは厄介なことに、ごく一部に起こっているだけでも歯は動きません。その程度によっては、所見がほとんど認められないため、診断がとても難しくなります。結局、歯を動かしてみないと分からないことも多いのです。
たとえ矯正治療中で歯が動くことが人よりも遅かったとしても、問題なく動いていることは、とても喜ばしい状態です。
歯の動くスピードは、骨の代謝のスピードなので、個人差が多少現れます。
そのため患者様によって、治療期間に差が出てしまうことがありますが、最後まで責任をもってきれいな歯並びと良好な咬み合わせを作らせていただくよう、最大限の努力をしておりますので、どうぞよろしくお願い致します。